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事件 [家事&育児]

 白やぎの暮らすアパートは、昔ながらの長屋付き合いのようなものが残っています。
母親同士、困った時には助け合えて、おすそ分けやおかず交換があったり、育児の悩み・愚痴・ちょっと聞いてみたいこと…先輩ママが相談に乗ってくれたりします。
アパート内の子供は、みんな誰からでも叱られるし、誰からでも助けてもらえる…そんな雰囲気の残る場所です。

 仕事を持っていたり、出産間近になって入居したりして、友達づきあいが薄いまま、出産する人も中にはいます。 産後、自分ひとりで育児を抱え込み、外に出ることもままならず…軽い育児ノイローゼのようになった人もいますが、みんなでお節介をやきました。
 
 親子ともに姿を見かけない、赤ちゃんが頻繁に長時間泣き続けている、ママがベランダで遠い目をしてボケ~ッとしている…何人かが気が付いて…押しかけました。
「赤ちゃん、抱っこさせて」「美味しいお菓子があるから、一緒にお茶しよう」「たまには外の空気を吸いにでよう」…強引なのは承知の上。 今、必要なのはママと赤ちゃんの二人きりの世界から開放してあげること…みんながそう信じて、親子で引っ張り出した。

 そのママは、それまでにあまりお付き合いが無かったにもかかわらず、すんなりと赤ちゃん同伴で玄関から出てきました。赤ちゃんは他のお母さんが抱っこして、ママは目の届く範囲内で他のお母さん達とお茶を飲みながら話をする…それだけのことなんだけど…ママは泣いていました。

ずっと一人ぼっちで初めての子育てをしてきた…相談相手もいなくて、実家も遠くて、パパの帰りも遅くて…不安がいっぱいで、寂しくて、しんどくて、赤ちゃんの泣き声がたまらなく辛くて苦しくて…。
みんな一緒に泣きました。「一人ぼっちじゃないよ」「よく頑張ったね」って言いながら…。

次の日からママは変わりました。一緒に買い物にも行くようになったし、ベランダから同じアパート内の子供達に手を振ったりするようになり、赤ちゃんも、他のお母さん達にいっぱい抱っこされるようになりました。 

そんなことが何回かありました。頼れるものは、すぐそばの同じ母親同士…子育てなんて独りじゃ出来ない。助け合わないでどうするのよ…。

でも…事件はおきました。

 生後2ヶ月の赤ちゃんは…母親の手によって短い生涯を終えました。
泣き止まないから…布団をかぶせ…それでも泣き止まなくて、手で首を絞め…最後は電気コードで
首を絞めたといいます。
救急隊が到着した時には、赤ちゃんは布団の上にきれいに寝かされ、ちゃんと布団もかけられていたといいます。
母親自身が、警察と消防に連絡したそうです。

そんなこと、私の周りには無縁だと思っていましたから…。このアパートに限って、そんな事件は起きるはずがない…そう思っていましたから…。

仕事を持っているお母さんでした。お腹が大きくなってから入居してきました。
お向かいのお宅とも交流はありませんでした。 挨拶などは皆がしてきたのですが…うなずく程度で
足早に通り過ぎる感じの人でした。
「子供が生まれたら変わるよ。」「出産をきっかけにお付き合いが始まるよ」…そう思っていました。

でも、実際には…たぶん里帰り出産をしただろう…くらいで、いつから赤ちゃんがいたのか…誰も知らなかったんです。気が付いたら帰ってきてた…そんな感じで、赤ちゃんのお誕生日どころか、性別すら知らなかった…。
 
赤ちゃんはよく泣いていました。時々お母さんはベランダに出て遠くを見ながらぼ~ッとしていました。 声を掛けると、家の中に入ってしまいました。 外で会った時にも、挨拶をするとほとんど目を会わす事もなく、行き過ぎてしまいました。

ほぼ毎日、おばあちゃんが来られていました。
週末には、お父さんとお母さんと赤ちゃんと…抱っこやベビーカーで出かける姿をよく見かけました。

「おばあちゃんいるし、お父さん協力的みたいだし…声を掛けても迷惑かもしれないね。」
「ヘンに他人がしつこくして、それがストレスになったら悪いかな。」
「もうすぐ暖かくなるし、首も据わってくるだろうし…暫くそっとしといた方がいいのかもしれないね。」
そんな話をした矢先の事件でした。

ショックなんてもんじゃなかったです。「なんで?」「どうして?」…そればかりが頭の中を何度も回りました。 おばあちゃんがいたのでは? お父さんが手伝っていたのでは?
それよりもなによりも…もしかしたら育児ノイローゼかもしれない…って感じていたのに、声も掛けていたのに…。助けられなかったという思いが、強く残りました。もっと、強引にでも声を掛け続けていれば…?…そんなこと、ただ近所ってだけで、私たちには関係の無かったことなのかもしれません。
私達がどうこうすべき問題ではなかったのかもしれません。

でも、実際に「あの時声を掛けてもらったから、私は子供に手を掛けずに済んだと思う…」そう思っているお母さんもいるのです。お節介が役に立ってきたのも事実なんです。

声を掛けてはみたけれど、それに応えられない位に…追い詰められていたんでしょうか?周りに助けを求めること、相談すること、しんどいと打ち明けること…弱みを見せるようで…自分がダメなな母親に見られるようで…イヤだったのでしょうか?

でも、気になっていたのに…どこかで分かっていたのに・・・知らんぷりしたんじゃないか…放ったらかしにしたんじゃ無いか…罪の意識のようなものが、まとわりついて離れませんでした。 それは今も残ります。

マスコミにアパートは取り囲まれました。幼稚園に迎えに行くのにも捉って、取り囲まれて、マイクやカメラを突きつけられて…。 警察が敷地の出入り口に立ちましたから、玄関までやってくることはありませんでしたが、学校から帰ってきた小学生達にも、容赦の無いカメラが至近距離で突きつけられました。アパートの子供達は、学校から電話があって、先生が引率して連れて帰って下さったので、ちゃんと帰ってこれましたが、子供だけで歩いていたら…敷地内にちゃんと入れたかどうか心配です。

夜遅くに、警察の実況見分が行われたようです。真夜中まで電気がついていて…寝苦しい夜を過ごしました。朝には、警察の立ち入り禁止も解除されました。

入れ替わり立ち代わり、新聞社やTV局がやってきました。いつもは午前のニュース番組やワイドショーなどは見ないのですが、ベランダに出るとカメラが向けられるし、外に出れば取り囲まれるし…家の中でTVを見ているのが一番落着くと言う皮肉。画面には昨日の事件。

「母親なのに」「母親でありながら」「母親の資格が…」そんなことをもっともらしく口にする顔ぶれ。
違う違う!そうじゃないの! 母親だから…子供を置いて逃げ出したり出来ない、この子は私しかいない…逃げ場所なんかないから…だから、思いつめる。追い詰められる。
放り出せない気持ちが…自分は母親だから…我が子だから…そう思うことがかえって気持ちの逃げ場を失くすのよ。
無責任ならば・・・何も考えていなければ…いい加減な気持ちで接していれば・・・育児ノイローゼなんかにはならないのよ。
真剣に向き合おうとするからこそ、悩んだり行き詰ったりするのよ。

「母親のクセして…」そんなこと言わないで!言われたくない!

道行く人が立ち止まって指差していきます。事件のあったお宅を携帯で撮影していく人も数え切れずいました。

何日たっても、玄関を訪ねてくるマスコミはいました。「住民の方しか知らない話を聞かせてください」…そんなこと、今あなたに話すことじゃないし、話したくも無い…。         

父親の職場に押しかけたマスコミもいました。勤務先の名前と映像を放送された為に、職場にも野次馬が出現。彼は、上司から「異動願い」を提出するように迫られることとなりました。  

今だから話せるけど…今だから話さなくちゃ…。

育児ノイローゼから来る発作的な行動は、母親ならば…誰にでも可能性のあることなのです。
本人の性格や周りの環境にも大きく左右されます。
でも、子育てで悩まない…?そんなことあり得ない。真剣だからこそ迷いも悩みもでてくるのです。
他人事なんかじゃない。親になれば誰にでも可能性のある事件です。

私だったかもしれないし、あなたかもしれない…。それくらい誰にでもありうる事件。決して特別な人だけが起こす特別な問題…じゃないのです。
母親だけの問題でもないのです。行き場をなくしたお母さんの気持ちを助けてあげられるのは、ほかならぬお父さんなのですから…。

私がここで記事にしたからといって、何になるわけではないけれど…。 あんな事件、二度と起こって欲しくないから…。 
自分には関係ない…そうは思わないで下さい。
「悪い母親が起こした悲惨な事件」…そんな風にだけは思わないで下さい。
どこでも起こりうることです。防げるのは、傍にいるあなたかもしれないから…。


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コメント 10

ちょんまげ侍金四郎

うちも決して人ごとでは無かった話です。
私もこのブログで先輩ママ殿達から色々アドバイスを頂き難を逃れたといっても過言ではないです。
男でも、どうやっても泣きやまないと呆然としてしまいます。
もっと24時間電話相談とか気軽に相談できる環境作りが大切だと思います。。。
白やぎママ殿ところは、昔の下町的でいいですね。昔は世話焼きお節介おばちゃんやすぐ怒鳴る頑固オヤジがウロウロしていたものです(笑)
by ちょんまげ侍金四郎 (2005-11-03 10:58) 

まな

あえて、この名前で・・

昔昔、・・育児ノイローゼと言う言葉すらなかったかもしれない時代
白やぎママさんの地域みたいに、隣近所の人たちが
皆で子育てをしていた時代に、私の母は、・・「私を産んだだけの母」は、自分が自由になりたいが為だけに
私の首を絞めたそうです。
偶然通りかかった消防団のおじさんに見つけられて、生き延びている私です。

だからどうだという訳ではありませんが、子供を持つ母親になって
あの時の「私を産んだ人」の気持ちが、ホンの少しだけ分かる気がした時もあります。

〆の言葉も見つけられないけれど、追い詰められた時は
どんな言葉も届かないものだ、と言う事は・・わかります。
by まな (2005-11-03 18:57) 

inuaru

何だか読んでいて、とても悲しくなりました(T_T)。
私はまだ学生でそういうこととは無縁ですが
おっしゃるとおりだと思います。
子育てに真剣な人ほど、
ノイローゼになる可能性が高いんだと思います。
そのアパートの”お節介”私にはとても必要なことだと感じました。
私も将来、絶対にぶち当たる問題だと思っています。
先輩が近くにいるといいなぁって、今から思います。
by inuaru (2005-11-03 21:00) 

たくまなママ

思い込んで殻に閉じこもってしまうと優しい声も聞こえなくなってしまうのでしょうね。
子供が泣き止まなのは経験しましたが、ノイローゼになりそうで泣きながらも「泣いて肺を丈夫にしなさい」なんて 今思えば昼間はかなりのズボラ母してたなぁ~ 友達は夜中は車に乗せて走り回っていました。
誰でも「何一つ躓かない子育て」 なんて無いと毎日が格闘しているんだよね。
by たくまなママ (2005-11-03 21:19) 

まき

悲しい事件ですね・・・育児ノイローゼって本人にはすごく辛い事なのはわかっていますが、他人が助けて上げられることってむづかしいんですよね。白やぎママさんあまり気になされないで下さいね・・・
あ~すれば良かった、こうすれば良かったかなって考えてしまう気持ちわかりますが・・・私も次女のリンが通っていた幼稚園で事件がありました。育児ノイローゼではないんですが、離婚問題でうつになっていた母親が子供を父親に取られたくないと子供を幼稚園から早退させて隣県の山奥に連れて行き、心中しようと子供の口をタオルでふさぎ殺してしまったのです。母親は薬を飲んで死のうとしたらしいのですが、出来なかったらしく、次の日に警察に出頭しました・・・この子はリンよりも一つ下の子ですが、幼稚園では一緒にいつも遊んでいた子で、リンには「引っ越したんだよ」と伝えました・・・父親もその1ヵ月後に公園で自殺をされました・・・その時に私も、あの時に母親に話を聞いてあげていれば良かったと悔やみました・・・世間話をしていただけに、事件後はとても辛かったです・・・白やぎママさんも、ホントに自分を責めずにお気を落とされませんように・・・・
by まき (2005-11-03 22:16) 

白やぎママ

コメントを下さった皆さま

 以前の新聞記事ですが父親が子育てに関心があって協力的であるか否か…で、母親の子供に対する虐待発生率は3倍になる…って話があったのを記憶しています。それは、母親が「自分一人ぼっち」と思う孤独感の違いだと思うのです。

 我が家の黒やぎは、全くの他人事でしたから…「元気な子に育ててな」「しっかり頑張ってくださいな…(パチンコ屋に消える…)」とか、ごく
日常的でした。
 しかも、おにいが生まれる以前…妊娠中のつわりが酷い時期や、流産の心配があって安静!といわれていた時期にも係わらず…何度もレイプまがいのことをされて、出血が止まらなくて産婦人科へ駆け込んだ
(もちろん自分ひとりでです)事まであります。「流産しそうになったから
イヤだ」と拒めば「夫婦だから拒否するのは許されない」とか「もう出血が収まってるって事は、大丈夫ってことや」とか言われましたし、手も出されました。必死で抵抗して、首を絞められ意識が遠のき…気が付いたら外は白んでいて、私は全裸で畳の上で…隣で黒やぎだけ布団の上で寝てたこともあります。
 ですから、「発作的犯行」は私自身の問題でもありました。
赤ちゃんおにいをチャイルドシートに乗せ、黒やぎがパチンコに出かけた後、人通りの少ない山間部や港の岸壁付近を車で走ったことも何度かありました。
まあ、私の場合は、育児ノイローゼではなく夫婦生活ノイローゼですからね。 それでも、おにいの泣き声が、辛くたまらなかった事はあります。

赤ちゃんの泣き声に、しんどいと思うこと、辛いと思うことは、決して悪いことでも特別なことでもない、よくある普通の感情で、問題はそれをどうやってコントロールしていくのか…だと思うんです。
子育てで悩んだことが無いとか、困ったことが無い…なんて、ありえないでしょ。育児雑誌の「悩まない子育て」なんて宣伝文句…胡散臭すぎます! 神経質になりすぎないことと、悩まないことは別でしょ?
悩むことと、思いつめることも、別でしょ?
悩んだ分、もっと良い方法とか、もっと大事なこととか見えてくるはずですから。私はそんな風に思っています。

自分自身がちょっと泥沼状態にはまりつつある時期に、なんでアノ事件のことを記事にしたのか…自分でもよく分からないのですが、どこか、行き詰って、ぶち当たって…って気分がそうさせたのかもしれません。

おにいを出産した日、母から言われた言葉です。「『育児』って言うのはね『育自』なんだよ。自分も成長しなくちゃ、ニセモノだよ。」

私も成長しているといいんですけどね、おにい&いもこに追い越されているかも…ちょっとあせっちゃいますね。
by 白やぎママ (2005-11-04 23:25) 

ありえ

こちらの記事を、自分のブログ記事に紹介させてください。
TB送ります。
by ありえ (2006-08-13 12:26) 

ふくちゃん

介護疲れでご自身の親に手をかける方もいらっしゃいます。
育児づかれてご自身のお子さんに手を・・・・


育児の大変さや、どうしようもなかった事、育児経験がなくても同情できることだってあります。
それをマスコや番組出演者だけが「事件」を語ろうとして、「重大事件」を作り上げる。それに腹が立ちます。
視聴者はみんな分かっていると思います。
by ふくちゃん (2006-08-18 09:26) 

白やぎママ

>ありえさま
過去ログにまで目を通して下さってありがとうございます。
この1ヶ月ほど、全然ありえさんのところへはお邪魔できてないのに・・・(涙)
来週は、少し自分の時間が出来そうです。^^w
by 白やぎママ (2006-08-20 00:14) 

白やぎママ

>ふくちゃんさま
いらっしゃいませ。m(_ _)m
最近、親子や夫婦間での介護疲れが原因の事件、多いですね。
私の独断と偏見ですが・・・このまま高齢化が進んでいき、社会のシステムが今の状態から変わらなければ・・・・この手の事件はどんどん増えてしまうように感じています。
介護も育児も「やって当たり前」「出来て当たり前」と思われがちですが、核家族化が進んで身近に相談する人もアドバイスをくれる人も、実質的なサポートしてくれる人もなかなかいない昨今、情報ばかりがあふれて精神的に追い詰められていくことはいっぱいあると思います。
一番分かってないのは・・・・偉そうにきれいごとや理想論を並べ立てている‘専門家‘と称される人たちかもしれませんね。
by 白やぎママ (2006-08-20 00:22) 

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